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comparative visualization

同じ人が、違う道を歩くと
4つのルートを並べて見る

東京の4つのルートを歩きました。合わせて49.7km、38,222点。 同じ人、同じ機器、同じ歩き方です。 それでも並べてみると、記録の質がまるで違いました。 測位の飛びは1回から9回まで開き、心拍の記録間隔まで違っていた。 1本を眺めていたときには、気づけなかったことです。

WebGPU 4ルート 38,222点 比較

[ § 0 ] 導入

1本では、比べられない

で軌跡を点群にし、 でその値を疑いました。 どちらも1本の記録を扱っています。

②で「時速109kmの飛びが4点あった」と書きました。多いのか少ないのか、 比べる相手がいないので分かりません。 標高差36.2mも、心拍106.7bpmも同じです。

4本たまったので、並べてみます。 本数が増えて初めて意味を持つ数字があります。

[ § 1 ] 4つのルート

歩いた道

6月末から8月初旬にかけて、東京の異なる方角を歩きました。 いずれも記事にしています。

日付ルート距離時間点数
06/29築地市場 → 押上片道11.04 km142 分8,529
07/15泉岳寺 → 市ヶ谷片道11.12 km151 分8,989
08/04勝どき → 勝どき周回11.11 km142 分8,488
08/09西馬込 → 中延片道16.39 km204 分12,216
重なる区間は、ひとつもありませんでした。 11m の格子に落として突き合わせたところ、4本の共通マスは0。 同じ道を二度歩いた記録があれば「同じ場所で誤差がどう変わるか」を見られたのですが、 今回は別のことを比べます
[ § 2 ] ビューア

同じ縮尺で、並べる

4本を切り替えて表示します。縮尺は共通なので、 経路の広がり方をそのまま比べられます。

Interactive · four routes
4ルート比較ビューア
実測データ(描画は2点に1点へ間引き)。ドラッグで移動、ピンチかホイールで拡大。
初期化中…
点サイズ 2.5

08/04 の周回だけ、形が閉じています。 出発点と到着点の直線距離は 244m。他の3本は 2.3〜7.1km 離れています。 同じ11kmでも、密度がまるで違うのが見て取れます。

[ § 3 ] 測位

飛びの回数が、9倍違った

②で扱った「測位の飛び」——歩けない速度で移動したことになっている点を、 4本すべてで数えました。

ルートエリア飛び最大速度断絶
築地 → 押上都心・下町560.8 km/h0
泉岳寺 → 市ヶ谷港区・新宿区5109.5 km/h1
勝どき 周回湾岸・埋立地927.0 km/h1
西馬込 → 中延大田区・品川区118.3 km/h1

16.4kmと最も長い西馬込ルートが、飛び1回で最少でした。 一方、湾岸を周回した08/04が9回で最多。距離はほぼ同じ11kmです。

飛びの「質」も違う

回数だけでなく、大きさも違いました。

ルート飛びの性格
泉岳寺101秒の記録断絶の直後に、109km/h が4点連続
築地断絶なしで 60.8km/h が単発
勝どき最大27km/h。小さい飛びが9回散らばる
西馬込18.3km/h が1回だけ。ほぼ正常
「9回」と「1回」は、同じ物差しでは比べられません。 勝どきの9回は最大27km/h——走ればあり得なくもない値です。 泉岳寺の5回には109km/hが含まれる。 回数が多いほど質が悪い、とは限りませんでした。 ②で「15km/hで切れたのはたまたま」と書きましたが、 ルートによってはその閾値では拾いきれないことになります。
環境との関係は、推測にとどめます。 湾岸で多く、住宅地で少ない——高い建物や水面の反射が効いていそうに思えますが、 4本では確かめられません。 同じ場所を複数回歩いた記録が要ります。 ここでは「ルートによって大きく違った」という事実だけを記録します。
[ § 4 ] 歩き方

速さは、驚くほど変わらない

測位がこれだけ揺れる一方で、歩行そのものは安定していました

ルート中央値95パーセンタイル停止
築地 → 押上4.8 km/h6.4 km/h3 回
泉岳寺 → 市ヶ谷4.9 km/h6.7 km/h7 回
勝どき 周回5.1 km/h6.3 km/h6 回
西馬込 → 中延5.1 km/h6.3 km/h13 回

中央値の幅は 4.8 〜 5.1 km/h。差は 0.3km/h しかありません。 95パーセンタイルも 6.3〜6.7 に収まっています。

歩く速さは、ほとんど個人の性質のようです。 道が変わっても、季節が変わっても、距離が1.5倍になっても 同じペースで歩いている。 ②で「歩行速度は一定」と書きましたが、 それが1本だけの性質ではなかったと、4本並べて確認できました。

停止回数だけは13回と開きがあります。ただし ②で見たとおり停止の判定は閾値で大きく変わるので、 この数字は「0.5km/h未満が15秒以上続いた回数」という定義込みで読む必要があります。

[ § 5 ] 発見

心拍の記録間隔が、違っていた

4本を同じコードで処理したら、1本だけエラーが出ました。 西馬込ルートの心拍が、半分以上欠けています

ルート心拍が記録された点欠損
築地 → 押上8,529 / 8,5290 %
泉岳寺 → 市ヶ谷8,989 / 8,9890 %
勝どき 周回8,488 / 8,4880 %
西馬込 → 中延5,276 / 12,21656.8 %

壊れているのではなかった

西馬込ルートの先頭
  1  07:35:55   —
  2  07:35:57   81
  3  07:35:58   —
  4  07:35:59   80
  5  07:36:00   —
  6  07:36:01   81
  7  07:36:02   —
  8  07:36:03   —
  9  07:36:04   82

規則的です。位置は1秒ごと、心拍は約2.3秒ごとに記録されていました。 欠損ではなく、サンプリング周期が違うだけです。

項目西馬込ルート
記録全体12,223 秒 / 12,216 点
位置の間隔1.00 秒/点
心拍の間隔2.32 秒/点
なぜこの日だけ違うのかは、分かりません。 同じ機器、同じアプリのはずです。 省電力の設定か、センサーの接触か、ファームウェアの更新か—— 記録からは判断できません。 ②で書いたとおり、理由を急いで作らずに事実だけ残します
1本だけ見ていたら、気づきませんでした。 心拍は 80〜126 の範囲で滑らかに動いており、 グラフにすれば何の異常もなく見えます。 「他の3本は欠損ゼロ」という比較対象があって初めて、 この記録だけ密度が違うと分かりました。
[ § 6 ] 心拍

日によって、10bpm違う

平均心拍も並べてみます。

ルート出発平均心拍最大標高差
築地 → 押上12:4894.311914.1 m
泉岳寺 → 市ヶ谷06:44106.713536.2 m
勝どき 周回07:1698.111922.4 m
西馬込 → 中延07:3598.912627.8 m

幅は 94.3 〜 106.7 bpm。12bpm の開きがあります。 速度がほぼ同じだったのに対して、こちらはよく動く。

標高差が最大の07/15が心拍も最大、最小の06/29が心拍も最小—— 対応しているように見えます。 ただし②で見たとおり、1本の中では勾配と心拍の相関は弱い(r ≒ 0.13)。

4点では、判断できません。 標高差と平均心拍が対応して見えても、 サンプルが4つでは偶然と区別がつきません。 気温、体調、睡眠、出発時刻——他の要因も同時に動いています。 「そう見える」という以上のことは言えない段階です。
[ § 7 ] まとめ

並べて初めて、意味を持つ

1本を詳しく見るのと、4本を並べて見るのとでは、分かることが違いました。

1本では4本並べると
飛びが5回あった1〜9回。ルートで大きく違う
歩行速度は一定だった4本とも 4.8〜5.1km/h。個人の性質
心拍は滑らかに動いていた1本だけ記録間隔が2.3秒だった
標高差は36.2mだった14.1〜36.2m。この日は最大だった

とくに心拍の件は、比較しなければ永久に気づけなかったと思います。 数値としては正常で、グラフにしても違和感がない。 「他と違う」という形でしか現れない異常でした。

この記事のまとめ

  • 4ルート・49.7km・38,222点を同じ縮尺で並べた。共通する区間は0マス。
  • 測位の飛びは1〜9回。距離が最長のルートが最少だった。
  • 飛びの回数と大きさは別。9回でも最大27km/h、5回でも109km/h。
  • 歩行速度は4.8〜5.1km/h。道が変わっても季節が変わっても、ほぼ同じ。
  • 1本だけ心拍の記録間隔が2.3秒だった。欠損ではなくサンプリングの違い。
  • それは比較しないと見えない異常だった。単体では正常に見える。
  • 平均心拍は94.3〜106.7と12bpmの幅。標高差と対応して見えるが、4点では判断できない。
  • 環境と測位品質の関係も同じ。同じ道を複数回歩いた記録が要る。
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  1. 軌跡を、点群で描く
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  2. GPSは、嘘をつく
    測位の飛び・集計の錯覚
  3. 同じ人が、違う道を歩くと(この記事)
    4ルートを並べて比べる

次は同じ道を複数回。重ねられる記録が貯まったら。

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