1本では、比べられない
①で軌跡を点群にし、 ②でその値を疑いました。 どちらも1本の記録を扱っています。
②で「時速109kmの飛びが4点あった」と書きました。多いのか少ないのか、 比べる相手がいないので分かりません。 標高差36.2mも、心拍106.7bpmも同じです。
4本たまったので、並べてみます。 本数が増えて初めて意味を持つ数字があります。
歩いた道
6月末から8月初旬にかけて、東京の異なる方角を歩きました。 いずれも記事にしています。
| 日付 | ルート | 形 | 距離 | 時間 | 点数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 06/29 | 築地市場 → 押上 | 片道 | 11.04 km | 142 分 | 8,529 |
| 07/15 | 泉岳寺 → 市ヶ谷 | 片道 | 11.12 km | 151 分 | 8,989 |
| 08/04 | 勝どき → 勝どき | 周回 | 11.11 km | 142 分 | 8,488 |
| 08/09 | 西馬込 → 中延 | 片道 | 16.39 km | 204 分 | 12,216 |
同じ縮尺で、並べる
4本を切り替えて表示します。縮尺は共通なので、 経路の広がり方をそのまま比べられます。
08/04 の周回だけ、形が閉じています。 出発点と到着点の直線距離は 244m。他の3本は 2.3〜7.1km 離れています。 同じ11kmでも、密度がまるで違うのが見て取れます。
飛びの回数が、9倍違った
②で扱った「測位の飛び」——歩けない速度で移動したことになっている点を、 4本すべてで数えました。
| ルート | エリア | 飛び | 最大速度 | 断絶 |
|---|---|---|---|---|
| 築地 → 押上 | 都心・下町 | 5 | 60.8 km/h | 0 |
| 泉岳寺 → 市ヶ谷 | 港区・新宿区 | 5 | 109.5 km/h | 1 |
| 勝どき 周回 | 湾岸・埋立地 | 9 | 27.0 km/h | 1 |
| 西馬込 → 中延 | 大田区・品川区 | 1 | 18.3 km/h | 1 |
16.4kmと最も長い西馬込ルートが、飛び1回で最少でした。 一方、湾岸を周回した08/04が9回で最多。距離はほぼ同じ11kmです。
飛びの「質」も違う
回数だけでなく、大きさも違いました。
| ルート | 飛びの性格 |
|---|---|
| 泉岳寺 | 101秒の記録断絶の直後に、109km/h が4点連続 |
| 築地 | 断絶なしで 60.8km/h が単発 |
| 勝どき | 最大27km/h。小さい飛びが9回散らばる |
| 西馬込 | 18.3km/h が1回だけ。ほぼ正常 |
速さは、驚くほど変わらない
測位がこれだけ揺れる一方で、歩行そのものは安定していました。
| ルート | 中央値 | 95パーセンタイル | 停止 |
|---|---|---|---|
| 築地 → 押上 | 4.8 km/h | 6.4 km/h | 3 回 |
| 泉岳寺 → 市ヶ谷 | 4.9 km/h | 6.7 km/h | 7 回 |
| 勝どき 周回 | 5.1 km/h | 6.3 km/h | 6 回 |
| 西馬込 → 中延 | 5.1 km/h | 6.3 km/h | 13 回 |
中央値の幅は 4.8 〜 5.1 km/h。差は 0.3km/h しかありません。 95パーセンタイルも 6.3〜6.7 に収まっています。
停止回数だけは13回と開きがあります。ただし ②で見たとおり停止の判定は閾値で大きく変わるので、 この数字は「0.5km/h未満が15秒以上続いた回数」という定義込みで読む必要があります。
心拍の記録間隔が、違っていた
4本を同じコードで処理したら、1本だけエラーが出ました。 西馬込ルートの心拍が、半分以上欠けています。
| ルート | 心拍が記録された点 | 欠損 |
|---|---|---|
| 築地 → 押上 | 8,529 / 8,529 | 0 % |
| 泉岳寺 → 市ヶ谷 | 8,989 / 8,989 | 0 % |
| 勝どき 周回 | 8,488 / 8,488 | 0 % |
| 西馬込 → 中延 | 5,276 / 12,216 | 56.8 % |
壊れているのではなかった
1 07:35:55 — 2 07:35:57 81 3 07:35:58 — 4 07:35:59 80 5 07:36:00 — 6 07:36:01 81 7 07:36:02 — 8 07:36:03 — 9 07:36:04 82
規則的です。位置は1秒ごと、心拍は約2.3秒ごとに記録されていました。 欠損ではなく、サンプリング周期が違うだけです。
| 項目 | 西馬込ルート |
|---|---|
| 記録全体 | 12,223 秒 / 12,216 点 |
| 位置の間隔 | 1.00 秒/点 |
| 心拍の間隔 | 2.32 秒/点 |
日によって、10bpm違う
平均心拍も並べてみます。
| ルート | 出発 | 平均心拍 | 最大 | 標高差 |
|---|---|---|---|---|
| 築地 → 押上 | 12:48 | 94.3 | 119 | 14.1 m |
| 泉岳寺 → 市ヶ谷 | 06:44 | 106.7 | 135 | 36.2 m |
| 勝どき 周回 | 07:16 | 98.1 | 119 | 22.4 m |
| 西馬込 → 中延 | 07:35 | 98.9 | 126 | 27.8 m |
幅は 94.3 〜 106.7 bpm。12bpm の開きがあります。 速度がほぼ同じだったのに対して、こちらはよく動く。
標高差が最大の07/15が心拍も最大、最小の06/29が心拍も最小—— 対応しているように見えます。 ただし②で見たとおり、1本の中では勾配と心拍の相関は弱い(r ≒ 0.13)。
並べて初めて、意味を持つ
1本を詳しく見るのと、4本を並べて見るのとでは、分かることが違いました。
| 1本では | 4本並べると |
|---|---|
| 飛びが5回あった | 1〜9回。ルートで大きく違う |
| 歩行速度は一定だった | 4本とも 4.8〜5.1km/h。個人の性質 |
| 心拍は滑らかに動いていた | 1本だけ記録間隔が2.3秒だった |
| 標高差は36.2mだった | 14.1〜36.2m。この日は最大だった |
とくに心拍の件は、比較しなければ永久に気づけなかったと思います。 数値としては正常で、グラフにしても違和感がない。 「他と違う」という形でしか現れない異常でした。
この記事のまとめ
- 4ルート・49.7km・38,222点を同じ縮尺で並べた。共通する区間は0マス。
- 測位の飛びは1〜9回。距離が最長のルートが最少だった。
- 飛びの回数と大きさは別。9回でも最大27km/h、5回でも109km/h。
- 歩行速度は4.8〜5.1km/h。道が変わっても季節が変わっても、ほぼ同じ。
- 1本だけ心拍の記録間隔が2.3秒だった。欠損ではなくサンプリングの違い。
- それは比較しないと見えない異常だった。単体では正常に見える。
- 平均心拍は94.3〜106.7と12bpmの幅。標高差と対応して見えるが、4点では判断できない。
- 環境と測位品質の関係も同じ。同じ道を複数回歩いた記録が要る。